企画展アーカイブ/ ARCHIVE

  • コウムラシュウ 展 / Shu Koumura solo show
    「 ポラロイド / ゼラチン シルバー プリント 」
    「 polaroid / gelatin silver print 」

    2018年11月24日 ~ 2018年12月16日
    24 NOVEMBER 2018 - 16 DECEMBER 2018


    12月8日, 9日,15日,16日 : 作家在廊予定
    8, 9,15,16 December : Artist will be present

    ドイツを拠点に写真作品を制作しているコウムラシュウ。
    新たな表現を求めて、数年前から古典技法の研究を始めた。
    今回、“ ポラロイド ”との出会いから生まれた作品を初めて発表する。


    ポラロイドという魔法  文:コウムラシュウ 私にとっての写真は、頭の中に描き出される虚構(フィクション)を眼前の風景、被写体から創り出すというものである。現実から虚構を創り出す。それは見えているものを写し取らず見えていないものを写し出すことを意味する。より正確に眼前の被写体を再現することを目標として進化してきた写真にそんな相反することが可能であろうか? その独特の画質と即時性により多くの写真家、芸術家に愛用されてきたポラロイドには、数多くの製品が存在したが、私の虚構を創り出す魔法のフィルムは、大判カメラで撮影出来かつポジシートと同時にネガフィルムが得られるポラロイド独特のT51、T55、T665の3製品のみである。 ポラロイドの作像原理であり1930年代に欧州で開発された拡散転写法は、感光したネガフィルムと受像機能を持つポジシートの間に現像定着処理液を注入して画像転写を行うというもので、この処理液の経時変化に伴い予想もつかない画像が得られる。それは時に写されるべき被写体の消失、存在しない紋様の出現など完全に予想する事は難しく、更に特定の条件下では諧調が反転した様な画像が生じることも加えて正に魔法=ポラロイドマジックとしか言えない世界が創り出される。 この魔法=ポラロイドマジックでどのような虚構を創り出すのか? 私の見たい虚構とは何なのか? それはかつて存在したかも知れない、あるいは存在しなかった世界の一場面。時にはグリム童話の一場面。時にはギリシャ神話の神々。またある時には聖書の一章節、それはギュスターヴ・モローに代表される象徴主義/幻視絵画に近いものなのかもしれない。そんな虚構を創り出す素材として私が選ぶのは、ドイツの霧の冬枯れの森、朽ちていく巨木、共同墓地に飾られた彫像たち。 一度、ポラロイドという魔法にかかってしまうともう通常のフィルムに戻る事は難しい。T51、T55、T665いずれの製品も最終生産ロットの使用期限は2008年前後であり、内蔵された処理液ポッドの寿命から2040年頃が使用限界となるが、手元の最後の 1枚を撮影し終えるまで私のポラロイドという魔法の作品制作は続いていく。

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